《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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『太田寛郎集(自註現代俳句シリーズ九期8)』より
2017.08.16
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睡りにも睡る力や蝌蚪の紐
俎の水を均(なら)して桜鯛
人妻をむんずと借りて運動会
初蝶の影にも光にも触れて
おぼろ夜の籠に寝かせて白ワイン
泳ぎより戻り真上にシャンデリア
柚子の湯に沈み一国一城主
まなざしを高きへあづけ絵踏かな
笹鳴きや闇みつしりと蔵の中
猫の仔の牙が甘えて出てしまふ
神童のその後を知らず青嵐
鶏頭のひとかたまりの憤怒かな
花茣蓙に売る金銀のまがひもの
駘蕩と運河ふくらみては凋み
戦争がどこかにあつて蝶の昼
滴りの光が先にしたたれり
まつさをな空の中より柿を捥ぐ
湖を濃くさくらを淡く遠江