《古書・古本の出張買取》 奈良・全適堂 | 日記 | 大島千鶴子『句集 巴里祭』(邑書林)より


2023/12/30
大島千鶴子『句集 巴里祭』(邑書林)より




1997年
「氷室」同人
第1句集

今朝もまた毛虫殺せし手を洗ふ

客去れば夫と二人や枇杷食うぶ

夢醒めて花野に一人立つも夢

むき出しにパンかかへゆく皮コート

命あらば逢はむといひて年の暮

門燈や落葉の好きな吹き溜まり

荒海をかたへに大根干されけり

家計簿を閉ぢたるあとの湯ざめかな

またたける星の凍てたる蒼さかな

秋の蚊を目で追ひ受話器置きにけり

長閑けしやたゆたふ舟を句座として

日記果つ大切なこと書かぬまま

わが胸に問ふ詩ごころ多佳子の忌

南座の大屋根反りて月あがる

花菜入れ道端に籠売られけり

老教師虫追うてをり秋うらら

シャンデリア灯して寒の仏具店

自転車を歩かせてゆくおぼろかな

旅程表畳んで冬の星仰ぐ

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