《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 | 日記 | 森田純一郎『句集 街道』(東京四季出版)より


2024/03/27
森田純一郎『句集 街道』(東京四季出版)より




2024年
「かつらぎ」主宰
第4句集

色持たぬ忠雄の館冬に入る

また雨か呟き聞こえ峠の忌

玉虫の飛ぶや物部氏の墳に

縁日に日除はみ出す物多し

義援乞ふ声涸れ募金箱の灼け

郡山廓跡にも金魚飼ふ

人も樹も背高き国に黄落す

間なく去る祖国の秋を惜しみけり

客は我一人聖夜の理髪店

黒ビール干してEU離脱問ふ

絮飛ばしたんぽぽのただ突つ立てる

光撒き散らし金魚の仕分けさる

五稜郭要に四囲の山粧ふ

天高し遺跡から打つEメール

タクシーのドアを福笹はみ出しぬ

芽吹きけりかつてハイネの住みし家

獣めく法螺の音響く修二会かな

魂の走れるごとき修二会かな

萩揺らすほどなる風の古刹かな

秋灯下一句一句に対峙せり

国生みの島を目指すや旅始

鉾縄を跨ぎ一喝されにけり

脱稿にひとり酌みたる夜長かな

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