《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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迫石松子『句集 寒暁』(蘇鉄社)より
2019.01.14
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昭和59年。
「蘇鉄」同人。歯科医。
妻の句、宿痾の句、ダムの句が多い。
好きな句もあるが、「癒ゆ妻」がやたら出てきて、活用としていかがなものか。
連体形なら「癒ゆる妻」、過去形なら「癒えし妻」で、五音だと句に仕立てやすいが、こういう表記が散見される。
梅雨ふかし処刑の如く吊革に
藪蚊打つ四方海光の流人島
殉教地神父が作る葱大根
玄海のまっ赤な日の出終戦日
蜻蛉の目玉に沼は生きている
びっしりと落葉終生職ひとつ
鳥渡る妻の潔癖娘がうけて
田植機の死角や隅は姥が植う
黄落の尽したる幹かげりなし
鮎の碑やいま鮎食ひし口噤む
雪に転び雪を摑みて起き上る
生くるだけ生きむ一躯に花吹雪
生涯を無冠のままに黄落す