《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『静坐のすすめ』創元社 電子書籍でも入手可
2016.06.09
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これまで静坐に関する本は現在では新刊で入手できるものはないと思っていました。
ところが、昭和42年初版の創元社の『静坐のすすめ』は2006年に復刊され、まだ売られているようです。
しかも、アマゾンの電子書籍キンドルでも読むことができます。
http://amzn.to/1VOdgWt
古書ではわりと求めやすい価格で売られているので、新刊である必要はないのですが、新刊でまだ売られているということに価値がある。電子書籍化もされているのでなおのこと。
著者は佐保田鶴治、佐藤幸治の共著。
佐保田はヨーガをかじったことがあれば誰もが知るほど有名ですが、岡田虎二郎に直接静坐を学び、生まれてから今まで出会った人の中でいちばん立派であったと述べているのはあまり知られていないことだと思います。
この本では岡田式の静坐は一部で、中国やインド(ヨーガ)の静坐、藤田霊斎の調和道や二木式の呼吸法、日本の正座、キリスト教の黙想まで取り上げられています。 どの方法が正しいということはないでしょう。どれをやるにしても拘泥すれば心身が硬直していくのでよろしくない。
ただ、忘れ去られてはいますが、現代において岡田式の静坐は時宜に適っているような気がいたします。
ヨーガのように女性が会社帰りに教室に通い、がんばりすぎて続かないといったことがありますが、疲れている人にこそ難しいパターンや動きを必要としない静坐は適しています。
バブル期のようにしゃにむに活力を発散させる時代でもありません。鬱傾向の人も多い世ですから、そういう方はがんばることも難しいでしょう。
ヨーガも本来はがんばるものではなく、楽に坐れる身体を作るということをよしとします。
しかし、静坐はさらにシンプルでただ坐るというだけのもの。老若男女問わず、気力の少ない人にも取り組めるもので、ぜひ知っていただきたいものです。私のようにめんどうくさがりでも続けられる。坐禅のように修行色もおそらく少ないので、ヨーガを除けば、女性の比率が比較的高いのも特色ではないでしょうか。調和道は正直、今の女性ならその動きを目にすると引いてしまうのではないかと。
静坐は正坐に近い坐りなので、日本人には何の違和感もないと思われます。
成長の次代は終わり、成熟の次代を迎えたと言われて久しい。
ならば自身も静坐によって成熟させてみてはいかがでしょうか。
スピリチュアルな浮ついたものも一時の騒がしさは薄れてきたようですし。
静坐は本来はすすめるものではなく、自発的に静坐のほうへ歩み寄っていただかなければなりません。
ただ、そのためには前に述べたように、知るよすががなくてはならない。
『静坐のすすめ』がまだあることがうれしいのはそのためです。
ちなみに巻末には「参考書ならびに道場」の項目があり、静坐会も全国の20ほど近い会場が挙げられていますが、今ではどれもないものばかり。復刻版にもそのまま載っているのでしょうか。
町を歩いていれば、姿勢のよい人を見かけることがあまりありません。
これほど姿勢が悪くなるとその反動として今や伝統芸になりつつあるいわゆる正座も見直されてくるはず。
そこでもう一歩踏み込んで静坐にまで到ってくれればと願っています。