《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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広重ブルー
2016.10.04
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大阪の高島屋で開催中の「広重ビビッド」展。
今月17日まで。
原安三郎コレクションの「六十余州名所図会」「名所江戸百景」はともに初公開とのこと。
これがさらに価値があるのは初摺で非常に状態がいい。
1枚1枚に見ごたえを感じる展覧会というのはそうはありません。
安藤広重だけでなく、葛飾北斎や歌川国芳の作品もあり、これは必見です。
広重ブルーと言われるように、北斎や国芳を見てもこれほど深い青はないでしょう。
西洋ではフェルメールブルー、東洋ではヒロシゲブルー。青の双璧と言いたいほど。
木版画は絵師だけでなく、彫師、摺師の技量も非常に重要です。
ぼかしの技法を見事に使って紺ともなる深い青のグラデーションを表現する。
滝の流れなど木目を生かしているのもすばらしい。
これらは図録だけではわからないところ。本物を見てほしい。
思いのほか人も多くなく、じっくり見ることができました。
遠近を強調した構図もど迫力。
現代の写真を思わせる構図で、西洋の印象派たちに影響を強く与えたのもうなずけます。
「六十余州名所図会」養老の滝
「六十余州名所図会」紀伊和歌の浦
今日は古書組合の市場がありそのついでに京都市美術館で「若冲の京都」を見てきました。
若冲は非常に流行っていますが、どうしても見たかったわけではなく、主催者がチケットを送ってきてくれたためです。
古書店にはよくポスターやチラシが送られてきて、宣伝してね、その代わりにチケットを渡すから、ということがあります。
なので行かせてもらったのでいちおう宣伝をしておかないと。
若冲や見れば見るほど京都人
という川柳を詠んでしまったほど、熱いものが感じられない。
錦市場で青物問屋の主人で錦市場の中興の祖とも言われているそうです。
なので画風からして私が見るかぎり「THE・京都人」というほど京都人。
ニコニコして感情を表に出さない。 与謝蕪村も同時代というか同年齢ですが、蕪村はいい。味わいが感じられる。
どこもかしこも若冲ですが、やはりまったく惹かれませんでした。
さらに細見美術館で琳派展。
中村芳中の「月に萩鹿図」に惹かれました。 月も萩も鹿も秋の季語。
おとぼけた鹿がほほえましく今の季節にぴったりです。
さらに下賀茂神社で社家を改装して鴨長明展が行われているので行ってきました。
たった一人のために丁寧に家の由来から所蔵品まで説明していただき、贅沢な時間を過ごす。
ただやはりはじめに戻って広重。
これはぜひ見ていただきたい。若冲に行くより広重。
広重で三句。
秋天へ広重ブルー届けたき
青蒼く描く広重秋気澄む
広重の青をまとはん秋暑し
10月なのに暑い日が続きます。
美術関係の洋本、和本はもちろん、木版画や水墨画なども取り扱っております。
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