《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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映画「ラサへの歩き方ー祈りの2400km」
2016.10.13
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みなみ会館で見てきました。
チベット巡礼を描いた初の映画ということ。監督は中国人。
あらかじめ監督の脚本があるため、完全なドキュメンタリーではありませんが、チベットの村で巡礼をする出演者を探し、ドキュメンタリーと言ってもいいほどのフィクション。
巡礼の途中で身ごもった村娘が出産し、赤ちゃんも一緒に道をともにしますが、それも実際の妊婦さんと産まれた赤ちゃん。
ドキュメンタリーにすると入れたいポイントが入れられないということや、撮影のためのよい天候を待つということができないということがあるようです。
巡礼のパーティーは12名。 老人から小学校低学年くらいの少女まで。
下駄のような板を両手にはめ、3回かち合わせて五体を地面にくっつけるように投げ出す。 つまり五体投地で進んでいく。巡礼の五体投地は初めて見ました。
その姿はしゃくとり虫のようだと言われる。
途中、こういうことが起こってほしいということが次々起こる。
巡礼者に対してお茶をふるまわれたり、逆にふるまったり。
夫婦+ロバの巡礼が印象的。 ロバは家族だからロバには坂道だけ荷物を引かせると。
ラサに着いたらロバは入れないのでロバの写真をもって幸せを祈るという。
困難も次々と待ち受ける。
落石で足を怪我する者が出ると治るまで休む。
急いでいた病人を乗せた車とぶつかる。
こちらの車が大破するもさっさと行かせ、荷台を切り離して男たちで引いて歩く。
その分は五体投地で進んでいないため、車を引いた地点まで戻り五体投地で進む。
ラサに着くも、資金がなくなると働けばいいとその場で働いて稼ぐ。
巡礼に行きたいとはじめに言った老人がそこで死を迎える。
一行はカイラス山をめざし、老人を鳥葬に附す。
どれも決して急がない。
2400kmを1年かけていくというと狂気の沙汰のようだが、実は非常にシンプル。
この映画ではおおげさな仏教の話は一切出てきません。
虫を踏まないといった小さなエピソードは交えますが。
ただただ五体投地で進んでいくことがメインで、あまり宗教色を出さないようにしている。
五体投地のルールが5つ書かれています。
1・合掌する
2・両手・両膝・額を大地に投げ出しうつ伏せる。
3・立ち上がり、動作をくりかえして進む
4・ズルをしないこと
5・他者のために祈ること
もはや仏教がどうのこうのというのではない。
1から3は動作を、4は自身への戒め、5は他者への思いを表します。
ズルをしないというのは笑えるが、パーティーを組む理由の大きな理由でしょう。
この映画の中国語の題は「カンリンポチェ=カイラス山」。
「カイラス山」をそのまま日本のタイトルにしてもなじみがない。
英語では「PATHS OF THE SOUL」だとか。 「魂の小道」ってなにか仰々しい。
欧米の東洋趣味、スピリチュアル好きには受けるだろうとは思います。
日本では大げさにならないタイトルということで「ラサへの歩き方」としたとのこと。
このタイトルはいい。
ラサは有名でなじみがあるし、歩き方とすることで巡礼の作法であることが見て取れる。 いわゆる自分探しでもありませんから。
ただ五体投地で進む巡礼、その単純さ。
非常にていねいに作られた映画です。
五体投地はやってみると結構きつい。
体操としてやってみてもそれなりに効果はあるでしょう。
ただそこに大地への、自然への敬虔さがあるのが自然。
ちなみに静坐は動かない投地だと見ながら思っていました。
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You tube予告編
https://www.youtube.com/watch?v=F7REtRzg3hA