《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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10月の俳句
2016.11.01
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グルジア語「父」は「ママ」なり鳥渡る
九月尽そつと誤爆の記事閉じぬ
立ち込める霧や丹波の里の中
水の秋すつと脇差拭ひけり
一点に座れば秋気動かざる
とりあえずブラックコーヒーモンブラン
虚ろなる鹿の眼や反芻す
スウェーデンも徴兵制に鰯雲
秋夕焼棚田のごとく波打てり
秋天へ広重ブルー届けたき
太陽を少しけづらん秋暑し
秋の声童女の声や「はい、どうじょ」
青蒼く描く広重秋気澄む
広重の青をまとはん秋暑し
太陽の輝かずして秋暑し
じりじりと野分悠々たるピアノ
若沖や見れば見るほど京都人
楽聖に鍵聖の指触るる秋
気持ちいいほどの変節秋の空
山羊の毛の抜けゆくほどに秋深む
台風過ところどころの青き空
灯火親しふたたび若き日の文庫
小鳥来てゐたり残れる高き声
切れ長の目の天女立つ秋の寺
猫乗せて秋の日溜まり丸まれり
露こぼれ笑ひ仏に涙かな
遠山の羊飼い追ふ羊雲
線香のひときはしづか今朝の秋
粛々と終の支度や神無月
病身も老身も伸ぶ体育の日
天へ鐘水琴窟地へ寺の秋
それぞれの仏のかたち仏手柑
秋暁やゆつくりと息味はひぬ
十三夜によつぽりビルの上に頭
じんわりと芋粥沁みる断食後
町中に下駄の響きや秋気澄む
題目の疾きことそぞろ寒き朝
ゆるやかにそもそもを問ふ秋思かな
照らされてかぐや息づく竹の春
子を寝かせ大人の本に秋灯下
木の実落つ幼子の身の歪みなし
調へず調ふ息や秋深む
低気圧頭痛はじまり秋の雨
哀れ蚊や一撃の掌に血を残し
猫じやらし遊びをせんと生まれけん
猫じやらし喰ふ山羊遊び知らずして
気がつけばどこもかしこも草虱
秋の陽を残して電車ゆきにけり
羊雲重なる果てに羊飼い
秋天の果ての果てまで心かな
秋扇かばんの底に潜みをり
哀愁を語る二十歳や後の月
束ねられ一つとされし彼岸花
利用とは理用と覚ゆ私心なし
たかが林檎されど林檎の繰り返し
金槌の妖しく光る秋灯下
コスモスや天を揺さぶる震度六
父知らぬままに不惑の星月夜
石仏に残る彩り初紅葉
新しき自転車秋の新しき
西方に帰する香煙秋の寺
寺の名の香を求めて秋の寺
北冬に南なほ夏秋津島
喧騒の極に生まるる秋思かな
たつぷりと孤独を吸つて秋薔薇
情念の表面張力鶏頭花
蚯蚓鳴く五体投地の額より
地に響き秋気揺るがすシンフォニー
秋暁やめぐり出す血の温かさ
冷やかや山羊の蹄にそつと触れ
時忘るひねもす山羊と秋の空
小指から握る木刀秋気澄む
馬を駆る並べる薄のけ反らせ
肥ゆる馬向かうの牧を眺めけり
秋の馬より送らるる秋波かな
身に入むや寄木造りの仁王像
『失われた時を求めて』返り花
針下ろし最後まで聴く夜長かな
味噌ラーメンうなじを伝ふ秋の汗
月白や素焼きが売りのたこ焼き屋
胃袋の中の朝食みな大豆
子らの声澄みゆく秋のレクイエム
渋滞をゆつくりつるべ落としかな
秋気吸ひ吐くや一日二万回