《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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一音の長きピアノや冬終る
2017.02.05
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昨日はひさびさのびわ湖ホールにて、小菅優ピアノ・リサイタル。
小菅さんのピアノは一度聴いてみたいと思っていた。
最近の演奏者をあまり知らないが、これからの日本人ピアニストとして期待している若手。
正直、ビジュアルで売っている人ではない。ゆえに実力でしっかり聴かせてくれる。
演目の前半は、ベートーヴェンのピアノソナタ「月光」と「ワルトシュタイン」。
言わずと知れた名曲で、帰りのお客から聞いた評と同じく「ワルトシュタイン」がよかった。
後半は、武満徹の「雨の樹 素描」のⅠとⅡ。さらにリストの「巡礼の年 第3年」より”エステ荘の噴水”、「バラード第2番」、ワーグナーの「イゾルデの愛の死」(リスト編曲)と3曲連続で。ワーグナーはびわ湖ホールで「ラインの黄金」が上演されることから入れられたのかもしれない。
スタインウェイの音が心地いい。
ピアノは弦楽器のように強弱をつけることはできないとされているが、一音をはぐくむように奏でられていた。
立春を過ぎ、暦上は春。冬の終わりを惜しむかのように。ち
なみに季語に冬惜しむはない。
冬は惜しまれるものではないということだろうが、そう思うときがあってもいいのではないか。
コンサート終了後、ガラス越しに琵琶湖を眺められるホール内のカフェレストランで休憩。裸木に雀がやってきたが、一羽だけ下の枝に止まる。
定員オーバーだったのか、アウトサイダーなのか。自分の姿もまたそこに重ねられ。
「月光」やスタインウェイの音冴えて
一音の長きピアノや冬終る
ただ一羽枝を違へたり寒雀