《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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経験をせぬも経験亀鳴くや
2017.02.16
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経験をせぬも経験亀鳴くや
Aという経験をした人がいて、その経験をしていない人もいる。
しかし、その経験をしていない人は、Aをしていない経験をしているとも言える。
そもそも経験とは自分だけにしか存在しないもので、同じ経験をしたと思っていても各々で捉え方は異なり、別人物が経験しているゆえに同じ経験たり得ない。
経験を実感するほどに経験とは孤独なものと感じることだろう。
「亀鳴く」は求愛する亀が鳴くという春の季語。
実際に鳴いているのを聞いた人はおそらくいない。
しかし、鳴いていないのもまた鳴いていないと鳴いているということ。
おもしろい季語ではある。
魚は氷に上り座敷に山羊上がる
「魚氷(うおひ)に上る」は氷が割れて魚が氷の上に乗ってしまうという春の季語。
春だから山羊は座敷に上がっているわけではないが、上る、上がるというのは春らしい。
渾身で鹿振り払ふ名残雪
山羊もそうだが鹿もおしっこをした後や雪を振り払うときは、全身をフルに使って震わせる。
見るたびに身体の使い方に感心する。