《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 | 日記 | 『伊藤トキノ集(自註現代俳句シリーズ七期23)』より

◎近畿一円、出張いたします。 一般書から学術書・専門書、現代から江戸(和本)まで。

Top >  日記 > 『伊藤トキノ集(自註現代俳句シリーズ七期23)』より

《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記

『伊藤トキノ集(自註現代俳句シリーズ七期23)』より

2017.05.11

白息の答へ白息もて問はれ

月明し産んで小さき身を抱かれ

子とふたり午後は忍法昼寝の術

青年の白息太し去るときも

着ぶくれてゐて愛などと真赤な嘘

暗がりを駆けてしなやか恋の猫

空蝉をつぶすこはれぬものが欲し

日を避くる病者花野を行くときも

光背の痩せて月下の露坐仏

自然薯を彫りし奈落を覗きこむ

山羊の目が金色メリー・クリスマス

梅林を出て物忘れせしおもひ

甘き汗甘酸つぱき汗待合せ

蟷螂や夜のやはらかき鎌づかひ

てのひらに縦横のすぢ種選み

ふつくらと鼻の先より朝寝覚め

おのが影にもおどろきて孕み鹿

玉の汗ぬぐはずに礼チェロ奏者

駆けつけのたちまち三個蓬餅

大物は寝かせて運ぶ植木市

夏初めポケットに詩の書き損じ

馬返しなどとうに過ぎ登山バス

利き腕に付き手に負へぬ草虱

幸せの八分目ほど柚子の風呂

校庭がのつぺらぼうの冬休み

栄螺食ぶさざえのごとく押し黙り

速歩のいつか駆け足祭笛

掃き寄せしものうつくしき牡丹園

緑陰をさてと出てゆく老教授

百両がほどをこぼして実千両

花冷えや取れさうでゐて取れぬ刺

われも子も夫も悪筆星まつり

突き指をして少年の夏終る

ふかふかのパンの切口震災日

遅れきし夫を春着の袖で打つ

ちらと白ほらと紅寒の梅

虫干しや夫の知らざる文の束

帰省子に母のことばのやつぎばや

青葉風埴輪の馬も鞍を置き

曝す書のなかに正座のままの父

日記一覧へ戻る

【PR】  セレーネ株式会社  有限会社 福屋尾崎商店  Chef's Kitchen Studio 「#51」  王様のフレンチ  銀座スリーハンドレッドバー