《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『髙崎武義集(自註現代俳句シリーズ七期44)』より
2017.05.25
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新藁にまたがり性に目ざめたる
いなびかり流れの底に応ふもの
裏返し脱ぐ青年の汗のシャツ
白鳥の水輪岸までくづれずに
罠かける山の眠りをさまさずに
雪卸す梯子が雪に根を下ろし
鬼逃ぐる闇へとどめの年の豆
躓きてかをりいやます梅林
敗荷に比すればかろきわが挫折
しまひには四つ脚となる蓮根掘り
百叩きしたる布団を抱へこむ
染め抜きの紋あざやかに揚羽蝶
炎天の犬抜けるほど舌を垂れ
門鎖せば虫籠となる明治村
籐寝椅子きしませわれをとりもどす
竹を伐る親子の絆断つごとく
凍土その下にひしめくものの声
老鶯のこゑを重ねて二尊院
上下の葉の反り合はぬ椿餅
月明のポストへ急がざる歩み
照明の当たりて飛花の下りられず
冬帽の目深に己欺くや
雲丹割くや能登半島に膝をつき
一対はいのちのはじめ貝割菜
息白うしておもむろに一家言
村ぢゆうの田を一枚にして蛙
昵懇の古書店休みなり暑し