《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『山仲英子集(自註現代俳句シリーズ八期24)』より
2017.07.24
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粧ひて齢のあきらか万愚節
指さきのつめたきことのほかは春
土不踏(つちふまず)にも日を当てて日向ぼこ
涅槃図を納めて柱ほどの箱
指先で突く薄氷の泣きどころ
滝壷にとどくまで声あげぬ水
谺して定まる浄蓮滝の丈
読みかけのもの胸に伏せハンモック
五六騎の過ぎて竹馬日和かな
土になるまでのくれなゐ落椿
居ながらに潮どきを当て生身魂
手をかざすときに傾く踊の輪
身細りしおもひ花野の中を来て
梅漬けに欲しポンペイの出土壺
夏炉焚く海抜三千八百余
前文にきのふ爽涼けふ秋冷
雁しづか棹から鉤になるときも
万策の尽きしおもひの湯ざめかな
滝拝む合はせてぬくきたなごころ
掛けてすぐ睡くなる椅子黄落期
四十になる子を叱る夜寒かな
口中を車庫と呼ぶ子やかき氷
てのひらへ素直に返り紙風船
処女盤のままのレコード鳥ぐもり