《古書・古本の出張買取》 京都・全適堂 の日記
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『辻田克己集(自註現代俳句シリーズ続編24)』より
2017.08.09
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逢ひに行く緋のマフラーを背に刎ねて
嫁が君父の家いま兄の家
われ在りて思うてをれば厠の蚊
空蝉の爪深く立つ桐の幹
林檎食ふりんごのなかにゐるやうに
探すものだけが出て来ぬ冬の暮
全山の絞る力を滝と呼ぶ
九鬼説の粋の縦縞蜥蜴の子
ワグナーのとどろきわたる黴の家
ビル工事寒し堕々々々々々々々と
老人はくさめのあとをぶつくさと
シーザーを刺す星空の野外劇
鶏頭を庭に待たせてある如し
爺々と蝉にいはるるまでもなし
北窓を開く手力男之命
春暑き土佐やアイスクリンの旗
粗酒粗肴どころか地酒山鯨
落し文まさかの人と人の仲
稗史にはありとせる径蚯蚓鳴く