《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『杉良介集(自註現代俳句シリーズ九期7)』より
2017.08.29
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畑打つて美濃の山城きらめかす
流星に願ひ人間臭きこと
福相を深めて父の日向ぼこ
待春やとびとび押しの朱印帖
耳の日や役所にでんと投書箱
うれしさが後脚に出て跳ね仔馬
崩れむとしては蚊柱たち直る
紙皿にカレー山盛り文化の日
寒餅のひび吉なりや凶なりや
黒鯛(ちぬ)釣りの岩一枚を分かち合ひ
蝙蝠(かわほり)のひるがへりては星を出す
子の部屋の暑さポスター貼りつめて
鹿の子の眼のつぶら班(ふ)のまだら
裸木の上に裸の空ありて
鳥渡る豆粒ほどの五色沼
広島の牡蠣ぢやあ食うてつかあさい
巫女の緋袴にとびつく春の雪
寒柝を打つ星からも打ち返す
婆にまだちから青梅打ち落とす
月あふぐ岩一枚の橋の上
跡取りも嫁もあきらめ耕すか
皇居いま大虫籠といふべきか
水無月の水をゆたかに河童淵