《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『那須乙郎集(自註現代俳句シリーズ4期35)』より
2017.10.25
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子を抱く妻冬虹を光背に
雷去りし机上聖書の外あらず
枯池の底にひとすぢ秋の水
冬虹に禱る奇跡を希はねど
旅に覚め朝の放屁の爽やかに
日曜の手を妻に貸す秋ざくら
青空へ双手突込み袋掛
月光に指をあやつり林檎むく
何怒る何泣く羅漢しぐれつつ
喪のものを流せば冬日のせて去る
泣きたくば泣け雪嶺に一穢なし
妻の帯ななめに低しあやめ切る
われに来る落葉と見えてとほく去る
注連かへて滝あらたなるひびきもつ
月に翔け翼下にくらき地中海
梅雨滂沱杭いつぽんの犬の墓
生かされてまだ巡りあふ大文字
栗さげて父情おろかに子へ急ぐ
十六夜や恋のごとくに妻連れて
新涼の渦生みしづむ潮仏
目覚よしテラスに蟹の訪ねきて