《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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北川千代『句集 鉾囃子』(本阿弥書店)より
2018.02.15
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死ぬこともなかなかのもの雪霏々と
寒の水所詮ひとりの顔洗ふ
麻の服さらりと女ごころもつ
男下駄気楽に履いて年を越す
しあはせの顔がさくらの下通る
大文字の右足のびて涼しかり
誰か何か言うて来さうな四温晴
山茶花のま白さ夜をほしいまま
過去は過去大年の湯に身を沈め
生くるとはたださへずりを聞く朝
女にはなれず南瓜をスパと切る
人去りてよりの空間蘭匂ふ
北山杉ぐんと突つ立つ冬旱
小刻みに寒しぬくしと京師走
蟹の脚ぽきぽき折つて睦月終ふ
四角の堂四角に歩む修二会僧
虚ろとは満ちたることか夕桜
<金閣寺>
金色の雫浄土も花の雨
ソーダ水がぶがぬ飲んで頭は空に
一歩遅れ二歩駆け出して冬銀河
筆太に「めし」大阪の炎暑来る
暮れ落つるまでの幾色夏の雲
敬老の日と言はれつつ腕まくる
寒鮒のつぶやき聞きて針はづす
とんがつて写楽の鼻や冬ごもり
観音の指(および)より降る花の雨
松ぼつくり浮いて卯浪の白さかな
鉾の下氏子の顔をして歩く
ひとときはおろそかならず菊の朝