《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『桂米朝句集』(岩波書店)より
2018.03.18
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表札のかわりの名刺空っ風
春の雪誰かに電話したくなり
下は締め上唇の半開き
一望のしぐれの中の彦根城
咳一つしても明治の人であり
ゆだち来る大和三山すじかいに
教材のあまりと百合をいけくれし
敗戦も蟻めざすところのある如く
風鈴も鳴らず八月十五日
再婚のはなし又消え秋扇
含みある医者の言葉やなめくじら
富山梨売る子の胸のはちきれそう
新米に新海苔添えて古女房
祇園うら年増ばかりの針供養
土用波何人処女を奪われし
受験子に一声かけて寝酒かな
分譲地今年限りのつくし萌ゆ
台風の来らんとする繁りかな
ランドセルこれが苦労のはじめかも
看護婦の肩ごしにあり雲の峰
戻り来て足の春泥ぬぐいけり
パンティはふとんの外に朝寝かな