《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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鈴木真砂女『句集 紫木蓮』(角川書店)より
2018.03.28
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来てみれば花野の果ては海なりし
明治生まれで昼寝嫌ひの女かな
水呑むは酔覚ますこと蚯蚓鳴く
大漁のこぼれ鰯は波が引く
これよりは自然薯掘りの鮑海女
糶り残るこの鮟鱇の面構へ
読初の男が留守を預かりぬ
雪女足手まとひの子は持たず
戒名は真砂女でよろし紫木蓮
悪女にもふるさとはあり遠蛙
生涯を女将に徹し薄衣
白絣尼にはなれぬ女かな
愛されしこともありけり蝿叩く
蟻地獄仔細見極め女去る
神仏に頼らず生きて夏痩せて
祈ること知らぬ女に星流れ
買つてのむ水のうまさや旅の秋
九十年生きし春着の裾捌き
白魚を呑んで紅唇たぢろがず
如月や身を切る風に身を切らせ
いのち長き花買ひ求め啄木忌
電話かけずかかつても来ず夏の雨
生涯を大根引かず種も蒔かず
初夢は顔を洗つて忘れけり
長生きも意地の一つか初鏡
夜桜を見にゆく帯を締め直し
摘草の籠を満たして重からず
成人の日いきなり雪の平手打ち
涅槃西風銀座の路地はわが浄土
雁と別れ人と別れて残るもの
佳句詠めず鉢の金魚が平泳ぎ