《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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名村早智子『句集 樹勢』(角川書店)より
2018.05.02
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蕗の薹摘む日だまりを摘むやうに
リュック負ふ両手が自由春の山
子どもの日子どもが一人ゐるだけで
蟇百年そこにゐたやうな
初詣楠の樹勢をいただきに
海へ出るころには春となる大河
雲に湧く力桜に咲く力
鳥が鳴く声を出さねば凍るかに
青空が戻り寒さが戻りけり
命あるものに命の水澄めり
宿だけは決めてありけり冬の旅
紙幣もて紙幣押し込む社会鍋
本尊の耳たぶほどの甘茶仏
貝母咲く何を言うてもさみしき日
袋掛手許が暮れてしまふまで
一つ欲しひとつが採れぬ烏瓜
結社主宰の句集。
「リフレインの名村」と言われたそうだが、たしかにその傾向はある。 平易な言葉で表現しようとしているのがよく伝わってくる句集である。