《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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辻田克己『句集 昼寝』(角川書店)より
2018.06.06
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子の仰ぐ口になかなか雪入らず
全山の絞る力を滝と呼ぶ
ワグナーのとどろきわたる黴の家
只ごとといへば只ごと牛蒡引
はしやぐ子のセーターを母ひつ摑む
列車発つ枯野曳きずるやうにして
去年今年繋ぎ交響曲「悲愴」
折らばすぐ氷柱も兇器たり得むに
スコップを雪に突立て困り果て
遠足がぐつたりとバス降りて来る
冬の水じつとしてゐることの意味
老人はくさめのあとをぶつくさと
春ショール水のごとくにぬぎにけり
筍を茹で観音を茹でゐたり
蝮の目死んでゐるとは言ひながら
田を植ゑて山城大和水つづき
盛塩の尖りて暑き日となれり
大空のめくるる如く朴葉落つ
「幡」主宰の第五句集。