《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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佐々木正樹『句集 刹那』(花神社)より
2018.06.26
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リヤカーを帰りは押して春の月
戦友よマンゴーの種埋めながら
翼拡ぐれば白鳥の胸小さし
口蓋に最中張りつくよなぐもり
げんげんで飾り卑弥呼の裔である
米の字はコメにアメリカあめんぼう
啓蟄や皮のやぶれしオムライス
紫煙吹きこめば重げな石鹸玉
死にそこなひや生きそこなひや八月や
ぷかぷかと浮く遠泳の人の首
はたた神天井が破られたかと
そこここに銭落ちてゐる夢はじめ
大阪城一番地一地虫出づ
涅槃図の外の衆生は泪せず
ふにやふにやに原爆ドームかげろへり
蔓たぐりまつろはぬものぶつたぎる
助けてと言ふ手袋が落ちてをり
著者は広島生まれ。
「幡」会員。