《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
粟津松彩子『句集 月牙』(永田書房)より
2018.07.09
-
以前紹介した『あめつち』に続き。
こちらも同じく、ザ・ほととぎす。
ザ・花鳥諷詠。
花篝風がちぎつてゐる焔
蜻蛉の力を抜いてゐる葉先
秋日和とは歩いても憩ひても
ビール飲む自由が嫁にあるわが家
水底に景色が生れ水澄める
口漱ぐとき眦に神の梅
蜷といふものの重みのひけるみち
拝観といふ心にて見る紅葉
川上の消息伝へ秋の水
飛んでゆく蝶にまかせてゐる視線
かたわらといふ場所があり蚊遣置く
大琵琶の景を一羽の鳰がなす
膝抱いてゐる手を春の風が解く
田園は燕の景を繰り返し
旅までの残暑の日日の身を守る
風に散りをりしが雨に散る花に
どの母がどの子の母か水遊び
打水のとどかぬ箇所が待つてをり
城門を閉じだんじりの町となる
風船に映る景色と透く景色
蘂に置く蘂よりほそき蝶の足
朝寒も食卓に着くまでのこと
一家族づつに秋晴ある芝生
櫨紅葉あたりに色の無き如く
薄氷に風のかたちのありにけり
新緑としての大きさ嵐山