《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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粟津松彩子『句集 花よりも』(永田書房)より
2018.07.23
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湖何もはじまつてゐず朝曇
雲水の行く秋風の姿して
アルプスの景色の中の林檎捥ぐ
落葉掃く音小きざみになりて終ふ
水を翔つ一瞬鴨の重さあり
梟の横向けば貌なくなりぬ
スケートを楕円に廻はす曲ワルツ
杖として借りる女人の肩小春
黒もまた夏の色なり烏蝶
大空に無きが如くにある冬日
チューリップよりも短き児の脚よ
船形の火に逆縁の子の乗るや
銀河汲む北斗の柄杓ありにけり
砂日傘あまた一つの太陽に
湖の天を指したる蘆の角
啓蟄の大地みづうみつづきなる
紅といふ色に明暗ある椿