《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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辻田克己『句集 明眸』(氷海俳句会)より
2018.08.16
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「幡」主宰の第一句集。
700句という膨大な数。
雨の中に雨降りずぶ濡れのプール
永かりし風船の黙妻の黙
自説などなし吹かれ飛ぶ浜千鳥
禱りより固き瞑目シャワー浴ぶ
桜晴子の快便の快音よ
水筒の茶がのど通る深みどり
寒がりて妻の眼鏡に映りにゆく
畑打って終始孤りの事をなす
年の逝く際の際まで男女逢ふ
水の青空の青減るつばくらめ
大の字を教ふ裸の子が父に
土用波くるよ子の丈父の丈
ていねいに畳むパラソル中年か
葡萄吸ふ唯物論のこれも物
白菜の愚直を藁で括りおく
太陽が出る苗札のうしろより
書を曝し少年の日を曝したり
体操がひたと地に伏し天高し
妻憎し塩鮭のこのとんがり口
冬耕にゆく遠景となりにゆく
冬の蜂翔たざれば死ぬ翔てば死ぬ
畑打ちに家近づけり遠のけり
蛇とみる縄とみる否蛇とみる
すみぞめの翅盆僧のバイク行
中年の恋紅葉谷地獄谷
白息や生徒あざむく容易なり