《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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西山禎一『句集 嵯峨御室』(本阿弥書店)より
2018.09.08
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「沖」同人。
好きな句の多い句集でした。
句形がしっかりしていて、見立てにも共感できます。
こういう句を常時詠めたら、どんなにすてきでしょう。
餅飾るしづかに闇のあとずさり
涅槃図の中に嘆きの余白あり
月鉾を解き天心に月還す
光背の裏に囀りあつまれり
萍の闇のかなたの精神科
この景は京都のあそこでしょう。
まだ明るくならないうちに新聞を配りに行っていました。
景がよく見えます。
葵祭牛歩に人馬歩を合はす
洗ふたび墓銘の月日遠ざかる
初風呂や親子の嵩を溢れさせ
蔵開き詰まりし闇の寒さかな
おぼろ夜の足裏はるかにして眠る
ひしひしと一戸を囲み田水張る
菖蒲湯に老いて産湯のごとく浮く
運動会父母の目ひとつ児と走り
待たされてこころ占ふ目借時
薄倖を分けあふごとく螢売
生涯はしよせん散る葉の踊かも
湯豆腐の角しかとあり古稀祝
錦小路買ふものあふれ寒い町
何処より見ても虚のなく一冬木
抱卵は苦行のすがた愛鳥日
障子貼る宥めるやうな手つきして
旅立ちの足より浮力風花す
瀧の水時間失ふとき氷る
もがきゐて育つ倖せひなつばめ
竹伐られ一本づつの空あかり
木石に注連飾りして神棲める