《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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櫻井ゆか句集『いつまでも』(ふらんす堂)より
2018.09.27
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2010年。「雷魚」同人。
八月十五日に代表されるように、戦争を詠んだ句が多く、それらが新鮮に詠まれている。
それに対し、口語俳句やリズムのよい明るい句もあってバランスがよく取れていると思います。
春爛漫匂袋のにおい失せ
横たわる梯子八月十五日
十二月八日抜かれし杭と影
耳の日と気づきしほどの雨降れり
さくら咲く門に扉のなかりけり
うすらいにひざしのりゆく死後の景
昼寝覚しだいに濡るる雨の音
真正面の鏡八月十五日
瞑りて散らぬさくらとなりにけり
よく動く待合室の熱帯魚
昼寝覚机の下が明るすぎ
われの影われを支える残暑かな
水引草握り鋏が見つからぬ
日向ぼっこ猫がだんだんねこになる
うまごやしころんで起きてかけ出せり
帰省子の畳の上の手足かな
一枚の水を動かす夏の雲
草紅葉全員がまだ揃わない
少年になりたき少女白鳥来
枯菊を刈って日ざしを均しけり
初明りぞろぞろと影生れけり
椅子に垂る上衣ネクタイ昭和の日
定型をはみだしている蝸牛
真青なる空へおちそう松手入
昨日から上がり框の大南瓜
佇めばたちまち冬の木なりけり