《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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岩城久治『句集 秋謐』(富士見書房)より
2018.10.22
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平成7年。「参」主宰。
『春暉』『炫夏』と来ての第三句集。
タイトルは硬いが、どの句も難解なものはほとんどありません。
しかも日常がよく描かれていて、病気の奥さまのラブレターの一面ももつ。
頭を抱えずに読めてとてもいいなあという読後感が残りました。
したたかに汚れて戻る恋の猫
かき氷いのちの薄き父が食す
逝きしかと父の瞳のぞく寒さかな
風薫る校齢樹齢重ねをり
おのが音封じ込めむと滝凍つる
冬滝を見たる眼の芯痛し
きさらぎの音としナイフまたフォーク
黙読の授業風鈴鳴りゐつつ
賞杯のごとく子を揚げ良夜なり
牡蠣打場刃吊して昼休み
海荒の風が旗もむ建国日
十二月八日こんなにラブホテル
妻に似しふくら雀と思ひをり
画廊出ていきなり開く日傘かな
戒名を気に入つてゐる生御魂
松手入拝観順路変更す
本堂に足投げ出して初紅葉
締切の二時をひかへてばつたんこ
一賞に人の集まる文化の日
元日の虹見しことを吹聴す
子を抱いて汽車見せてゐる初景色