《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『津田清子集(自註現代俳句シリーズⅢ期21)』(俳人協会)より
2018.10.30
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昭和57年。
「沙羅」主宰。
私の結社の主宰の先生でもあります。
字余りのものが多く、すっと入ってこないのも多く。
キリスト教系の句も。
しかし、さすがと唸らされる句も多く。
ヴェール着てすぐに天使や聖夜劇
力一ぱい燈を搏ち叫びあげぬ蛾よ
寒き檻充たす孔雀の翼(はね)拡げ
命綱たるみて海女の自在境
下駄やトマト漂ふ海の親しさよ
断崖や滝の全重量を懸け
独奏や雷雨を厚き壁に絶ち
火口覗く生死の生の側に吾
噴水が噴き大都市の欝散ず
濡れし身は無敵荒布を抱き運ぶ
距りをもちて雪渓みな白し
太枝を剪られ回春林檎の樹
灼けし溶岩(らば)さまよふ原始人清子
盤石の割れ目に咲きて冬すみれ
滴る血尽きたる猪を吊しおく
千年の寺いつからの蟻地獄