《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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西谷剛周『句集 斑鳩』(幻俳句界)より
2018.11.06
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1997年。
「幻」主宰。
鉄棒の両手の中の鰯雲
除夜の鐘撞く右腕に子の重み
冬かもめ舞えり造船所の余白
冬の月女の声の父子家庭
酔眼の左右がにじむ冬銀河
風花や墨絵の仁王動く刻
カレー皿キュンと鳴る啓蟄の風
花冷えの卓両膝に両拳
青りんご一人づつ減る死者の守
祝杯の中の春燈妻がいる
冴え返る鋼板薄き錆を持つ
冬海へ鳶流されて流されて
木枯らしや議事堂前右折禁止
大の字にGパン乾く女正月
向日葵の見ている方に腰掛ける
どの秋も凱旋門に突き当たる
「さよなら」の前の言葉を捜す秋
初詣妻見定めて流される
つまづいて思わぬ人に会う桜
踊り子の胸がせり出す夜の新樹
虫干の本を重ねて人ぎらい