《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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村越化石『句集 端坐』(濱発行所)より
2018.11.26
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昭和57。
濱同人の著名な俳人。
盲目ということで、杖を題材にしたものなどが多い。
端居ややさびし濁世と離るるは
聖堂の大き涼しさ神ひとり
片蔭を正して一基一基の墓
幹幾つ触れ来し夏を惜しみてぞ
よき事のつづきのごとく花野に入る
十三夜失せゆくものに齢あり
冬を越すことの難くて端坐せり
粕汁をたつぷり盛られ山国や
大いなる山影の端きりぎりす
何か終へ何か始まる一焚火
霞む中ただ歩むのみ古戦場
頭の中の涼しきものをはたらかす
鉄風鈴山風ばかりうけて鳴る
存へて扇の風をふところに
毛布被て星の一つに寝るとせり
糊つよきものを着てこの夏を生く
杖に置く拳も灼くるひとつかな
福音の授かりたき日ばつた跳ぶ
もの枯れて手に一杖のありにけり
村ありぬ山の眠りをさまたげず
一樹より一とはばたきの涼風ぞ