《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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中村ヨシオ『句集 天田屋文エ門』’東京四季出版)より
2018.12.04
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平成24年。第三句集。
「海程」「未完現実」「木」同人。
著者は味噌蔵の主人のようで、代々タイトルの名前をついでいるとか。
現代俳句は無季や句またがりの破調もあったり、正直川柳だろうというものや、調べとしても好ましくないと思っています。どうしても定型をはみ出さざるを得なかったものは別として。
序文は金子兜太ですが、彼の句も基本的には好きではない。
しかし、伝統を破ることでマンネリを避けて新しいものが見えてくるのもたしか。
好きな句はさほど多くなかったですが、好きな句はすごく好きです。
斬り死にのさまに雑魚寝の青葉寺
昼月に軽石拾いに行ったきり
五本指の靴下はいて駱駝気分
なめくじの後つけてゆく金曜日
車窓に鼻をくっつける少年なめくじ科
長瀞のとろのあたりの麦とろろ
犬に鼻をなめられ俺の賞味期限
蝶の屍の軽くてきっと安楽死
かもめほど近づく若嫁との夕餉
逃げ水のすべて出雲にあつまれり
一枚岩真冬巨きな耳であり
鹿の瞳のずーっと奥のきみに逢う
人の日のにんげんという回し者
突然という必然の白雨あり
燕来る味噌踏む業を祖先より