《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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高野素十『句集 雪片』(新甲鳥)より
2018.12.10
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昭和27年。
第2句集。
言わずと知れたホトトギスの4Sの一人。
客観写生の極みで、私でも知っている句も。
農事の句は殊にいいなあと。農事に触れていないとできない句ばかり。
前半はほとんどおもしろいと思われなかったが、後半に入るといい句だなあというのが次々と。
一ひらの枯葉に雪のくぼみをり
方丈の大庇より春の蝶
顔を出すバケツの水の濁り鮒
田植女の手にひらひらと鮒あたり
ひつぱれる絲まつすぐや甲蟲
昨日今日船便りなし夜光蟲
づかづかと来て踊子にささやける
夕月に甚だ長し馭者の鞭
百姓の驚くほどの朝月夜
月の客或時は又萩の客
停りてほぐれつつあり秋の雲
志大いに秋の雨を行く
蘆刈女笑つて舟にとんと乗る
稲刈の姉のしぶきのはげしさよ
稲刈つて畔は緑に十文字
稲運びあきし子稲架にぶらさがる
欠航といふも冬めくもののうち
柊の花一本の香かな
盃を止めよ紅葉の散ることよ
落葉やや深きところが道らしき
もちの木の上の冬日に力あり