《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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森田峠『句集 三角屋根』(牧羊社)より
2018.12.22
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昭和56。
第二句集。
まだこの時点では「かつらぎ」主宰ではない。
字余りもなくきっちりと十七音に収めていて、あとがきにもあるように「写生をそれてゆく人が多い中で、私はいつまでもそれずに写生を深めてゆきたい」とある。
リズムが崩れず、徹底した写生なので読みやすい。
合図より競漕の水尾そろひそむ
村の塵ほとんど枇杷の袋掛
鮟鱇を置きざりにして市場閉づ
条里制わづかにわかる冬田かな
絵葉書にある花を見ずお花畑
ストーブの音のみ会議沈黙す
唇をとぢたる師あり卒業歌
もつれ解く縄に鵜匠のあわてざる
その道の人か利休の墓洗ふ
楠の根のみごとな張りや神の留守
外套の我を点じぬ流人島
てのひらをあてがひ轆轤始かな
地の涯の宿営まず鱈を干す
四股踏める浜の流氷ありにけり
外灯の雪落とすべく雪を投ぐ
佐渡一の川といふなり牛冷す
透きとほるシラスをすくふ夜振かな
一軒家四方の剪定はじめけり
顔ならべ親子の馬は肥えにけり
鼻息が土をとばすや馬肥ゆる