《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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小泉八重子『句集 幻花』(本阿弥書店)より
2019.02.06
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1998年。
「季流」代表。第4句集。
花どきの日本に着く遺骨あり
神と人その境目の虫の闇
霧の山売れて荒縄張られけり
北風に顔を曝して陶器売
向日葵や細身の男老いがたし
春くれば春の顔して古墳守
人容れていよいよ暗き椿山
春灯を滲ませ仮の平和あり
神よりの合図と知らず朴散華
桜蕊降るそれだけの非常口
よく笑ふ児を秋草に委ねけり
紫陽花やわが心身に部屋いくつ
山彦を引き寄せてゐる春田打
幾重にも刃を蔵ひゐて白牡丹
捨て切れぬ物憂かりけり龍の玉
雷鳴のはざまの心変りかな
風躱し日をかはしつつ冬薄
わが生に結び目いくつ石蕗の道
旅人のやうな顔して五月野へ
喪の幕を畳めば落ちる蝸牛
菖蒲湯やわが覚えなき胸の痣
神殿の見えざる奥も水打たる
子供靴片方冬の海へ出る
贋物の壺を愛して風邪籠