《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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大島民郎『句集 山月』(ふらんす堂)より
2019.02.14
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2006年。
「橡」同人。第5句集。
赤穂義士に思い入れがあるようで義士の句が多い。
正直、ほとんど義士に思い入れがないので辟易してしまったが、全体的には好きな句が多かったです。
雀の子奈良大学を巣立ちけり
この古刀淑気にあらぬ鬼気まとふ
牛うまれすぐ干草にまみれけり
初神楽流す樹頭の拡声器
をりからの花も名残や義士の寺
神将の秋翳探る奈良テレビ
またたくは待降節の牧舎の灯
噴水もやぶれかぶれの春疾風
日向ぼこ兼ねて雲水苔手入
抱かれて湖を見おろす避暑の犬
縫初やチャイナドレスに金糸竜
法話すむまでの午睡やバスガイド
菊月や白磁をきそふ酒器と茶器
瞼閉ぢ仏頭も秋惜しみけり
厚着とも見えぬ老尼へ比叡颪
修二会味噌ひさぐ暖簾は奈良晒
涅槃西風吹けよ蕉翁入寂図
啓蟄や老尼を慕ふ亀うかび
木彫木菟飾り茶房の愛鳥日
蒔絵師の書架に百花譜春を待つ
佐保姫の影さへあらず一の谷
うなぎ焼く炭が自慢の麻のれん
神の留守まもる古太刀のくもりなし
高欄に干す金襴の座主布団
紅茶淹れ軽騎兵聴く六日の夜
初屏風箱階段をかくしけり