《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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青柳志解樹『句集 松は松』(牧羊社)
2019.02.28
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平成5。
「山暦」主宰。第8句集。
俳人協会賞。
新涼や歯並びのよきハーモニカ
撫子や母の享年四十六
平凡も非凡もあらず青木の実
死といふはかく澄む冬の深空かな
父葬るなり白息を押しとどめ
顔すこし小さくなりて寒明くる
秋蝉の声棄てにゆく雲一朶
稲妻に斬られし頬を撫づるなり
紅葉谷より噴き上げて温泉の煙
乾杯や有明海に月を上げ
日向ぼこ顔を洗はず髭剃らず
ありありと別の世があり落椿
春の野に手足よごれて子がねむる
ゆく春や緬羊雲のごとく群れ
苔寺の苔の光の冷まじや
金管を出て音あそぶ冬の宙
啓蟄や石の蛙が石の上
独酌の果はいよいよ朧にて
おどろきしあとの親しさひきがへる
音といふ音を遠ざけ麦の秋
かたはらに石ありて聞く秋の声
しぐれきて里の小鳥を攫ひたる
朴の花仰ぐ眉間を日に射され
羽抜鶏ばかり生物研究所
波音も波のひかりも蝋梅に
遍照のひかりに眠る雑木山
鷺草を撮る鷺草にひざまづき
牛の目が赤し日暮の葉鶏頭
漁舟秋の光の帯に入る
山茶花白し散りついで咲きついで