《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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原田清正『句集 仔馬』(揺籃社)より
2019.03.06
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平成7。
「橡」同人。第1句集。
啄木鳥や珈琲にほふ森の家
山風にかわきておはす甘茶仏
向き違ふ巣箱の口や雪もよひ
朝市や遅れ来し荷の干蝮
秋の鮎青き火をもて焼きにけり
山鳥の尾羽を忘れし雪崩あと
朧夜の米吐く自動販売機
沙羅咲いて一夕灯る奥書院
仔羊の毛も刈りにけり膝に抱き
寒鯉に重たき目蓋ありにけり
うすらひを割りて染師の初仕事
暮れ時の風収まりぬ花こぶし
外套の我れ羊群と対しけり
仔山羊まだつながれずゐて冬ぬくし
汚れたる羊百頭地虫出づ
商売に囚はれの身や四月馬鹿
日溜りは羊溜りよ草紅葉
パソコンにひねもす仕へ梅雨に入る
みんみんの磴のぼり来て普茶料理
竜潜む淵とて馬の行き渋る
星ひとつ釣瓶落しに生まれけり
産土の神があやせる初笑ひ
ひとり子を野球にとられ花の旅
読みさしの徒然草や昼寝覚
何事もおこらずバレンタインの日
犬鷲や立春の雪踏みゆけば
魚止めの滝折りかへす鬼やんま
身の脂おとせと亀の鳴きにけり