《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
藤田晴『句集 年輪』(東京四季出版)より
2019.03.11
-
平成19。
「氷室」同人。第一句集。
孫居らぬ時よく回る風車
駆け寄りし犬に枯野の日の匂ひ
寝ね足りて覚めしふるさと若葉雨
点滴にかひな一本冷え切りぬ
草抜きてちちとの声へ近づきぬ
蓮を見るうしろ姿のうつくしき
禅寺の箒目正し実千両
のどけしや犬を忘れし立話
囀や湖より明くる志賀の里
この石に夜泣き伝説青嵐
枝蛙さわぐな吾は苦吟中
祭馬寄りて人垣たぢろげり
この道と定かならねど梅を見に
シャッターの上がれば春の花舗なりき
身を丸め咳の発作をやり過ごす
一切の経を収めて堂涼し
車止め嚙ませ一息鉾の衆
悴むや別れの際の長話
双龍図見に来し寺の春疾風
書に耽る洪庵の像緑さす
福笹の飛び込んで来し特急車
白菊や晩節といふ語の重さ