《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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由山滋子『句集 雪繽紛』(東京美術)
2019.05.20
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昭和60。
「かつらぎ」同人。第一句集。
夭夭の一語を識りし夜長かな
鷽替の神事に巡査もまれけり
風花の地に触るるともなく消ぬる
一束の菫をもつて存問す
群青の深雪月夜といひつべし
我が声におうと出られし裸僧
一面にしろがね光り干鰯
登りけり風土記の丘の高ければ
男山われに対する端居かな
白き鬚もつるる花は烏瓜
露の径叡山百句志し
描きしごと黒猫をりぬ芥子の花
花伝書に対して灯火親しめり
燦々と日のとどまれる牡丹かな
炉の婆は素十先生語りけり
考ふるにも似て麦を踏みにけり
避暑に読むリルケの詩集薄かりし
糞受けをつけたる騾馬や雨季終る
こもごもの息の白さや惜別す
石あれば概ね仏梅探る
ゴッホの黄ゴーギャンの茶の夏終る
かくの如く蓮は破れ道元忌
私意をはなれよの一語や翁の忌
笹鳴を相聞のごと聞きとりぬ
春月は朱欒の如し桜島
とある墓学徒兵なり花を掃く
銀漢のしぶけるごとし弥陀ヶ原
有馬山有りとも見えずしぐれけり
腰ひねり観音春を待ち給ふ