《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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佐藤瑠璃『句集 尾白鷲』(東京美術)より
2019.06.02
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昭和51。
秋櫻子門下。
公魚の湖はなれてはすぐ凍てぬ
傘触れて牡丹のひとつくづれけり
牧夫来て牛つどひそむ九輪草
絵硝子を影ひかり過ぐ夏の蝶
すぐ母に風邪さとらるる初電話
蘆花鏡花母の遺せし書を曝す
梟に白夜の森の暗からず
うごくもの大雪渓の羊のみ
鯵刺の銜へし白魚ひかりけり
船追ひて蟹摑みゆく尾白鷲
竹伐れば高天原にひびきけり
流氷の相搏つ音や夜の港
流氷の起伏まばゆき日の出かな
魚籠ぬけし蛸ゐて海女の跪坐ながき
牧牛に宗谷の霧笛鳴りつぐよ
夜明けつつ霜いちめんの草紅葉
ぼろ市の口あけ臼のまづ売れて
蟹摑みきて巌頭の鷲となる
星合の星を容れたり山の湖
成人祭加賀友禅の袖おもく
麗ら日のわだつみ声を忘れけり
白毫寺磴に椿の客溢れ
驢馬ぐるま触れゆくミモザこぼれけり
夕焼やくるま解かれし驢馬の群
磐走る水に満月くだけをり
ふくろうや栂のかこめる一氷湖
羊の毛刈るや雪渓ほそりたる