《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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尾亀清四郎『句集 飛天』(東京美術)より
2019.06.06
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平成6。
「銀杏」主宰。第5句集。
追馬の勝ちし合図の鉦たたく
渓流に瓜冷ゆるころ客来る頃
春月に放つ矢をもて神楽果つ
大梁に湯気岐れたつ薬喰
堂寒し大和坐りのみ仏と
汲みて売る寒鯉槽の底ひより
みづうみに出てそれつきり春の雷
新彊に蜃気楼見て旅も果
次の間に積みて嵩なき藺座布団
月の宮神馬も小舎に目覚めをり
初斧の竹一本を伐りしのみ
常濡れの道来て滝に正面す
落しある水の音なく夕月に
竜田姫追ひてこの道滝に尽く
誰の手ものがれて自在雪螢
棉を摘む三人に果てしなき大地
白南風の沖の雲見て休み海女
沙羅散りて朝夕の作務欠かすなし
身に入みて孝養太子像の前