《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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荻野信子『句集 推古の音色』(本阿弥書店)より
2019.06.10
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1990年。
「雨月」同人。
太綱を地にお木曳の休みがち
善も悪も弥陀は一如と初法話
大吉にも一戒はあり初みくじ
春寒や降ろさるるなき磔刑像
こけし一つ買ふ惜春の旅の果
礫にも寄りくる迅さ柳鮠
炉塞いで畳まさをの小半畳
非力の手合はす他なき原爆忌
廊渡り来る看護婦の聖歌隊
老ごころ知るは老のみ冬ふかし
衣更へて志さむか句の軽み
毀損仏並ぶ宝蔵梅雨ふかし
梅雨冷の肘抱き齢さびしめる
涸るるまで滝の四季詠みなほ未完
大文字の客往年の下宿生
絞りたる白布百巻御身拭
投縄のしゆるると鹿の角捉ふ
生身魂生きてし不思議申さるる
花愛でて死を恋ふこころなかりけり
夫置いて死ねぬ私寒に入る
福の豆八十二とは仰山な
かにかくの碑や瀬をへだて古簾
峰入や先達に蹤く御門跡
燈火親し妻には妻の蔵書殖え