《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
-
『大島民郎集(自註現代俳句シリーズⅢ期7)』(俳人協会)より
2020.01.14
-
昭和57。
馬酔木副会長。
山の萩見て来て庭の萩待たる
スケートのきほへば飛雪また飛雪
噴煙のたふれ雪渓よごれたり
子へ贈る本が箪笥に聖夜待つ
晩餐を待てば猟銃森に鳴る
御物展南京櫨のいろづけば
王朝もかくや青葉の渡廊
嵐山ねむりそめしと画家来たる
柿の芽や名窯継ぎて十余代
豪商の庭は見えねど松の花
神にして三輪山ねむることもなし
薬師寺も永き日のわが散歩圏
冬菊やいつも気丈に母の文
北山の杉映りゐしプール干す
森暮れてプールにうかぶ一羽毛
朝寝して霧氷は天にのぼりけり
木の葉散り高層ビルは灯の柱
煮凝や昼の饒舌夜の寡黙
波乗に丘の聖鐘とどかずや
ナイターの八回までは勝ちゐしを
冷房のバスを吐き出す船の胴
高速路良夜の運河わたりけり