《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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『現代俳句文庫6 茨木和生句集』(ふらんす堂)より
2020.02.22
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1992年。「運河」主宰。
屋根の雪掻きて地上に雪増やす
オーバーの胸雪まみれ逢ひに行く
一湾を揉めり冬浪押し寄せて
村十戸雪被て厚くつながれり
傷舐めて母は全能桃の花
教室にプールの水の匂ひ来る
峯行者雲の峰への第一歩
夕刊のなき信州の大夕焼
戻り来て真水を浴ぶる海女のこゑ
山桜活く玄関の板屏風
拝みたる位置退きて瀧仰ぐ
肌寒や肉紅くせる肉屋の燈
脱糞の快熊食うて猪食うて
玄関の白障子まで石畳
きらきらと吉野の寒さ木に空に
ミス卑弥呼準ミス卑弥呼桜咲く
先頭車のみ道知れる蛍狩
蟇直談判の声出せり
瀧を見る切羽詰まれる時間まで
日輪を言寿げる国山桜
膝つきし膝が濡れ来て蕨狩
蛍狩乳張り来しと小声にて
手拭を一本持ちて暑がれる
うぐひすの声もここらで聞けばこそ
水澄みてニ十戸と家かたまらず