《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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梶原抱芽『句集 巷』(近藤書店)より
2020.03.10
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昭和33。
「雪解」同人。「懸巣」主宰。
第2句集。
卒業のきのふの校舎よそよそし
子が泣いて蚊柱の蚊の殺到す
遠足をあすのたたみに夏みかん
キャベツだき主婦らはろじの家々へ
手相見へ梅雨の傘より手を出だす
としよりが坐つてをりぬ秋の風
ひたひたと運動会のはだし鳴る
立ち話ついにのみ屋へ啄木忌
草じらみまみれにもどり又喧嘩
諸方より酒いましむる賀状くる
庖丁のうもれて水菜きざまるる
即興の句を卒業の子にサイン
われも食う腹にいつぱい子供の日
菊に名のありてわが名のおろかしや
引率の教師のさむい顔がまづ
子と謀り端居の父をおどろかす
宿直のランプ引き寄せ野分の夜
あたゝめてくれゐし足袋とおもひはく
汗ぬぐふ農婦乳房を逆撫でに
酒ぬきし餉のさわやかや坊泊り
正月の腹空かさんと野に遊ぶ
卒業の答辞の稿に朱を入るる
聴衆の孤影と候補者の咳と
新墾のいも畑を守り農一家
緬羊をつなぎ虎杖原拓く
オホーツクの見ゆと花野につまだつに
がらくたのそれが寶とかびにほふ
思ひ出に父なし父の墓洗ふ
にきび面洗ひ長子ら初詣