《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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茨木和生『句集 真鳥』(角川書店)より
2020.05.17
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2015年。
「運河」主宰。「晨」同人。
第12句集。
木の化石木の葉の化石冬あたたか
見し夢のことのはてさて忘初
春駒の鞍外されて走りけり
ひと谷をとよもすこともほととぎす
滝の水かつて棚田も養ひき
蟻抓み抓み損ねて稚遊ぶ
水の深吉野の涼しさ極まれり
ふくらみて来たり桔梗の花袋
道を逸れゆけば一縷の秋の滝
花野広がる花嫁に花婿に
四阿は黒木の造り小鳥来る
日輪のことににこやか御遷宮
うどん鋤ジャンジャン横丁ならではの
年迎ふ本尊盗まれたる寺も
よく遊ぶ子の字のびやか筆始
聴きすましをれば確かに春蝉ぞ
骨切りの音や水鱧ならではの
息あらあらと緑蔭の大型犬
蛇も迂闊われも迂闊や蛇を踏む
根詰めて蓼食ふ虫を探さむか
大学生蝉をきもいと逃げにけり
霍乱の子のちんぽこの縮れやう
山荘の順路の中に秋の滝
綿虫を吹けば二つに分かれけり
しぐれせり夜の鉄軌を光らせて
大冬樹腰を叩いて見上げけり
あの呑み屋この呑み屋なし六林男の忌