《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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尾池和夫『句集 瓢鮎図』(角川書店)より
2020.08.19
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2017年。
「氷室」副主宰。第2句集。
比良八荒比良の見えざる荒れじまひ
暑つおすな生きとゐやしたん逢ひとおす
あと一つ星飛べといひ星飛べり
君そこに花に埋もれるやうに立て
湖を渡り切つたる夕立かな
この鰤は氷見とひときは声を張る
玉つくる間を負けてをり雪合戦
出番待つ畳にべたと獅子頭
蒲公英のあたりに停まり消防車
ゲルニカを前に汗拭くこと忘れ
馬術部の馬も新入り樟若葉
カクテルの氷ひとかけ高鳴らす
甜瓜ひとつのための回り道
地震情報ポケットに鳴り春寒し
老鶯のこゑよく通る防護服
洛中の時雨がおよび鳥羽伏見
結構と医師のひとこと夏隣
寒柝のひびく余震の町の闇
風邪の妻モーツァルトの他不要
残雪を落として止みぬ震度四
山科はむかし山階桜散る
西山のすとんと切れて竹の秋
熊の下り爪痕ますぐ橅の幹
すすき揺れ白馬連峰揺れにけり
椎の実を拾ふも坂の息つぎに