《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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寺田良治『句集 ぷらんくとん』(ふらんす堂)より
2020.09.14
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2001年。
「船団」所属。
囀りにきき耳立てるごはん粒
みずうみのかたちに眠る五月の胃
青蛇の土手をすべつてゆく娯楽
数学は冷たくて好き枯山水
てのひらは元あしのうら山笑う
しばらくは砂遊びする蕨餅
大いなる鳥籠のなか夏木立
天井の四隅すつきり冷奴
夕立やなにも咲かないトタン屋根
大屋根の端まできれい夏の星
夏の夜のコップは天体望遠鏡
小鳥来る去年のままの椅子の傷
青空はまじめで困る柘榴の実
天高し亀の子束子あおむけに
春ずんずん豚は鼻から歩き出す
神様の長いおなまえ秋の蛇
俎板が冬青空にぶらさがる
おいしくないおいしくないよと牡蠣の殻
枯滝の正体見たりとろろ昆布
雪の朝おおスザンナが転んでる
大寒や瓶は刃物になりたがる
カチューシャという名の猫と雪の夜
虎落笛はだかの耳を削ぎにくる
ストローの端にきれいな吸血鬼
傾ぐからヨットが好きという女
ワイパーが枯葉嚙んでる駐車違反