《古書・古本の出張買取》 ロバの本屋・全適堂 の日記
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佐久間慧子『句集 夜の歌』(文學の森)より
2020.10.03
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平成24。
「葡萄棚」主宰。第4句集。
老ふたりつかずはなれず春耕す
泰山木真理一つと咲きにけり
花高し蓮の水の暗ければ
あばら屋と見れば闘鶏飼はれけり
白桃やルノアルの彩ところどころ
梟のどちら向いても真顔かな
夏蝶にハチャトリアンの楽の欲し
手をついて太古の眠り山椒魚
古書肆よりとどく目録今朝の秋
紐つきれそこらに拾ひ菊括る
家猫の恋の相手のなきままに
右いせみち左はせみち風は秋
呼びこみをしては手焙へともどる
昼網と筆太に書き小鯵売る
懸想文売がひとさし舞ひくれし
雪舞ふやいま無音界無明界
猫百態スケッチしては冬ごもり
パパゲナとパパゲノめきて囀れる
どこをどうそぞろしてをり夜のさくら
春の水びいどろ細工生むごとし
錦鯉腿のごとくにうねりけり
毬割れてきらめいてをる一つ栗
新巻の役者顔してをりにけり
長机ふたりはなれて大試験
針の尖ほどの莟も室の花